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二冊の本のご紹介

 佐藤氏の「江戸」に関する本の推薦に触発された訳でもありませんが、ちょうど私も「江戸物」を読み終わったところでしたので、ご紹介します。
 もうすでに読まれた方も多いことと思いますが、一冊は「「日本問答」 田中優子、松岡正剛著、岩波新書 940円と、この「日本問答」から必然的に派生した「江戸問答」 田中優子、松岡正剛著 岩波新書 1000円です。紹介するまでもなく、田中優子さんは、我々より3歳くらい年下で、現時点では法政大学総長で、いわゆる「江戸学」の権威の一人。テレビでもよく拝見しますが、切れ味の良い論評とともに、いつも素敵な着物姿。本当に「男前」です。松岡正剛氏は言わずと知れた知の巨人、「千夜千冊」でも有名です。ついでに正剛氏は我々と同年生まれで学年は一つ上。お二人ともほぼ同世代です。

 最近は海外に出かける方も多いので、皆さんもよく遭遇されると思いますが、「日本特有の文化」について質問されると困ることがあります。何故なら、本当に多くの文化的事物のオリジンがほとんど中国をはじめとする外国の物だからです。例えば、歌舞伎、寿司などもオリジンは、というと、歌舞伎の隈取はどう見ても「京劇」に似ているし、寿司のオリジンが馴れ寿司にあるとすると、これも我が国の発明ではありません。「日本問答」では日本的なもののオリジンを丁寧に探っていきます。結論としては、個々の事物は日本オリジンではないけれど、日本に入ってくると、いつの間にか、本来の物とは少しづつ異なっていき、日本的になってしまう。それは文化の面に限らず、政治体制その他も同じであり、何故か「デュアル」の構造を持つとのこと。まさに松岡氏の専門である「編集」機能が常に働いていくことになるようです。そのような議論の中で、近代の基礎である「江戸時代」の理解が、何故か深まらないことに気づき、改めて「江戸問答」にまとめたようです。

私は、渡辺京二氏も好きで読んでいますが(「逝きし世の面影」など)、確かに、明治維新以降、意図的かどうかはともかく「江戸」が不当にないがしろにされているように思います。当然、いかなる国のいかなる時代の歴史でも、現在からみると目を覆いたくなるような事実に遭遇します。例えば、趣味でシェイクスピアの王朝ものを読んでいると、今に続くイギリスの貴族の多くが、過去に裏切ったり殺しあったり、子殺し、妻殺しなどあらゆる悪行を重ねています。戯曲の形にせよ堂々と世間に公表しているのはさすがで、都合の悪い歴史からも学ぶ姿勢は、確かに評価すべき点です。江戸を知ることは、その後に続く明治を深く理解することにつながりますし、明治に続く現代をも深く理解する助けになります。最も、明治や現代を深く理解して欲しくないむきには何を言っても無駄でしょうが。

個人的には、「江戸問答」のなかの「江戸時代には、田舎にも多くの寺子屋があり、多くの人が読み、書き、算術のほかに四書五経などを学んだ」「青年期には、就職などに関係なく新しい知識や、考え方を学ぶために方々に出かけた」とのこと。そういえば、今から三十数年前、初めてイランを訪れた時、五か所の国立研究所を順に訪ねたのだが、常に、数人の若い研究者が付いてきていた。最初はなぜ彼らが同行するのか分からなかったので、正規の(?)同行者である中央官庁のお役人と、ある国立研究所の副所長に聞いたところ、びっくりするような答え。「彼らは勝手についてきているんですよ。まあ、先生の話を少しでもたくさん聞くために。勿論、私費ですよ」まさに、わが国の江戸時代の勉学に燃える若者達のよう。イランにはイランの歴史があり、現在の状況への言い分もあろうが、新しい知識に対するあくなき好奇心は、これからの発展のためには大きな力となることだろう。

9組 松里
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